列車運転体験記

 
 
子供の頃、列車の運転士に憧れていた。運転士にはなれなかったが、一度は本物の列車を運転してみたいとずっと思っていた..
その夢を実現することができる施設が北海道にあると聞き、旅行の際に訪れてみた。その場所は、帯広と網走のちょうど中間あたり、内陸部にある陸別という町である。

陸別には元々、池田と北見を結ぶ国鉄池北線という路線が通っていた。1987年の国鉄民営化に伴い、一旦はJR北海道に引き継がれたものの、わずか2年で廃止。代わって、第三セクターの「ちほく高原鉄道ふるさと銀河線」として再スタートしたのである。
しかし、第三セクターでの経営もやはり厳しく、開業から17年目の2006年、「ふるさと銀河線」もとうとう廃止されてしまった。これにより、池田・北見間は完全に鉄道が無くなってしまったのである。

陸別町では現在、「ふるさと銀河線」の車両や路線をそのまま保存しており、気動車(ディーゼルカー)の運転体験をさせてくれるのだ。コースが3種類あって、それぞれSコース、Lコース、銀河コースと名づけられている。

■Sコース
駅構内を15分程度運転することができる。予約優先だが、当日の予約状況により当日受付も可能。料金は2千円で、小学校高学年以上が対象。

■Lコース
1週間前までの完全予約制で、80分程度の体験コース。指導運転士よりマンツーマンで講習を受け、駅構内約500mの往復運転を繰り返す。出区前点検やポイント切替も体験することができる。料金は2万円で、18才以上が対象。

■銀河コース
1週間前までの完全予約制で、80分程度の体験コース。駅構外の本線約1.6kmの往復運転を繰り返す。料金は3万円で、18才以上が対象。事前にLコースを修了していることが必須条件となる。

せっかく行くなら、ぜひ銀河コースで本線上を運転してみたい! そのためにはLコースの受講も必須なので、私は2日連続で予約をした。1日目がLコース、2日目が銀河コースである。

では、いざ陸別駅へ!


 
    現在は「道の駅」になっているが、ここには2006年まで「ちほく高原鉄道ふるさと銀河線」の陸別駅があった。
運転体験の受付は、この道の駅の中で行なわれている。
       
駅の構内は当時のまま残されている。    
       
   

そう。今でもここは、まぎれもなく「鉄道の駅」なのである。

       
のどかな田舎の駅といった感じだ。    

       
   

これが、本日運転するCR70型気動車。

1989年に製造された車両で、新潟鐵工所製とのこと。JR北海道のキハ130形と同形である。
「ふるさと銀河線」が廃止される2006年までの17年間、現役車両として活躍していた。

       
全長16.3m、自重28.0t、最高速度95km/h。
座席数46席、定員102名。
冷房はないが、逆に酷寒地仕様で寒さには強いそうだ。

ちなみに、ここ陸別は、冬になると最低気温がマイナス30度を下回ることも珍しくない。
そんな極寒の中でも、毎日走っていたのだから、すごい列車である。
   
       
   

指導運転士が列車をホームまで移動させ、いよいよ、これから体験運転が始まる。

       
車内の様子。
ローカル線によくある、4人掛けのボックスシートだ。
   

       
   

運転席の部分。
こちらも、ローカル線では典型的な、整理券発行機と運賃箱が備え付けられている。

       
運転席。    

       
   

まずは講習から。
私はてっきり、教室のような所で講習を受けるのかと思っていたが、車内であった..
まあ、マンツーマンなので、これが当然であろう。

ちなみに指導運転士は、JR時代から気動車を運転していたプロの運転士さん。

       
運転席に座って、運転方法を教わる。

指導運転士さん曰く。「気動車の運転は始めてですか?」
まあ、気動車を運転したことがある日本人は、1万人に1人もいないだろう..

@乗換スイッチ、A変速機、B逆転機、C運転台切替スイッチの順に操作すれば、発車準備は完了である。
   

       
   

発車の前に、運転席のドアを開けて、線路に下りる。

       
車両の前方に回って..    

       
   

各種点検を行なう。

連結器の操作や、手動でのエンジン起動なども体験することができる。なかなか本格的である。

       
いよいよ、出発進行。    

       
   

本日のコースでは、陸別駅の構内を実際に運転し、マスコンとブレーキの扱いを覚える。

       
初めて列車を運転してみた感想..

発車は極めて簡単。教習所でマニュアルの車を初めて運転した時は、よくエンストを起こしたものだが、列車ではその心配はない。

マスコンを1ノッチに上げると、列車が少し動き出す。そうしたらすぐに3ノッチまで一気に上げる。そして、所定の制限速度(駅構内は15km/h)に達したら、マスコンをゼロに戻し、あとは惰性で走らせるだけ。
初めてでも特に違和感なく、スムースに発車し、なめらかに加速することができた。
   

       
   

難しいのがブレーキだ。車と全然違う..
停止位置に合わせてだんだん減速していくのだが、ブレーキがかかりすぎるとかなり手前で止まってしまうし、逆に遅れるとオーバーしてしまう。
圧力計を見ながらブレーキ弁を操作し、圧力をかけたりゆるめたりを繰り返しながら徐々に止まっていく。言葉で言うのは簡単だが、これが本当に難しい..

       
駅構内とは言っても、ホームの部分だけではなく、500mほどの距離を走ることができる。
そこを何度も往復するので、このLコースだけでも、「列車を運転した!」という実感は充分に味わえるだろう。
   
       
   

構内では何ヶ所かに、旗を持ったおばちゃんが立っている。緑と赤の旗で、これが信号の替わりなのだ。

この日はあいにくの雨。おそらく近所のおばちゃん達なのだろうが、こんな雨の中、素人の運転に付き合ってもらって、申し訳ない..

       
500mの距離を5回ほど往復しただろうか。
本日のコースはこれで終了である。

まあ、なんとなくそれなりに停止できるようになってきたが、まだまだだな。
(当たり前だ。ド素人が初日にいきなり完璧に停止できたら、プロの運転士の立場がないではないか..)
   

       
   

明日は、この先の本線に出る。
いや〜、楽しみだ。

       
初日のコースを終えると、講習課程修了の証明書が発行される。この証明書があれば、本線での運転が可能になるのだ。    

       
   

今宵は駅舎の2階にある宿泊施設に泊まる。

宿泊料金は一泊二食付きで6,700円。ただし、Lコースと銀河コースを2日連続で受講すると、運転者本人の宿泊料金が無料になる。これはありがたい。

       
小ぎれいなビジネスホテルといった感じだ。    

       
   

食事は食堂で、他の宿泊者と一緒に食べる。

       
夕食。

この料金なので、まあ、こんなものだろう。
意外と美味しく、完食させていただいた。
   

       
   

朝食。

       
2日目は曇り。
雨が降ってないだけでも嬉しい。
   

       
   

今日のコースは本線での運転だが、まずは昨日と同じ列車を運転して、駅構内の端へ向かう。

       
そこから本線用の別の車両に乗り換える。
本日運転するのは、CR75型。
CR70型と全く同じ仕様だが、こちらはロングシートになっていた。
   

       
   

車内に貼ってあった路線図。

本日は陸別駅から下勲祢別駅までの1.6kmを走る。
これらの駅は全て架空の駅だ。廃止前の実際の鉄道では、一番左に書いてある「分線」という駅が、陸別の隣駅であったとのこと。

       
いよいよ本線で出発進行!    

 

       
   

昨日の駅構内とは違い、勾配もカーブもあり、完全な路線だ。
速度も30km/hまで出してOKとのこと。

列車が上り勾配に差しかかり、マスコンをノッチ4まで上げて加速すると、ディーゼルのグォーンという轟音が響く.. 私はこの音が大好きだ。気動車の魅力ですな。

       
本線上を快走するのは、たいへん気持ちが良い。気分は完全に運転士..    

       
   

車窓の風景。見事に何もない。

       
途中、「カネラン」という駅で停車する。

3回に1回ぐらいは、ほぼ停止位置で止まれるようになってきた。(逆に言うと、3回に2回は上手く止まれない..)
   

       
   

結局、この日は、1.6kmの距離を4往復した。

いや〜、楽しかった。子供の頃からの夢が、とうとう叶った。

       
ちなみに、今回の運転体験、嫁も同乗して、色々と写真を撮ってくれた。
ただし、同乗者は運賃が必要。(1日目は300円、2日目は500円)

嫁曰く。「なんで素人の運転する列車に、お金払って乗るのか意味が判らん..」

写真を撮っている時以外は、座席で爆睡していた。
素人の運転する列車で、よく眠れるな..
   

       
       
いかがでしたでしょうか。
料金は2日で計5万円。でも、この内容なら安い安い! 大満足の体験でした。また次回、北海道を訪れる際には、ぜひ運転してみたいと思っています。

【ふるさと銀河線りくべつ鉄道】
http://shibare.or.jp/category/train/


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スパミシュラン 特別編   
(2017年6月取材)   
 

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